私たち保護司の思い 〜回復への温かい理解を〜
私たち保護司は、罪を犯した人や非行のある少年の立直りや社会復帰を支援しています。覚醒剤取締法や大麻取締法違反等、薬物に関する罪を犯した方々の更生に携わることもあります。
ご存知のように、薬物犯罪は再犯率の高い犯罪です。実際に、令和2年度版犯罪白書によりますと、令和元年度に覚醒剤取締法に違反した者のうち、再犯者率は66.9%と過半数を大きく超えています。(グラフ1参照)佐賀県においても、覚醒剤取締法による検挙者の再犯率が高い状況は全国的な傾向と一致しています。
グラフ1:覚醒剤取締法違反検挙者数及び再犯率の推移
(令和2年版犯罪白書から)
また、近年、若者を中心に大麻による検挙者が急増しています。(グラフ2参照)大麻使用のきっかけは「誘われて」「興味本位」が、大半を占めています。インターネットなどでは「大麻は他の薬物より安全、害がない」「大麻は依存にならない、いつでもやめられる」「海外では大麻が合法化されているから安全」という情報もあり、危険なものであるとの意識を持つことなく、安易に薬物に手を出す傾向が、若者の間で顕著になってきています。
グラフ2:薬物事犯検挙者数の推移
(公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターウエブサイトから)
違法な薬物や一部の医薬品の中には、強い依存性が認められると言われています。「やめたくても、やめられない。」薬物依存症になれば、その治療には、長い時間がかかります。また、生涯を通して、「回復」への努力が必要となります。
薬物犯罪からの更生の難しさを実感している佐賀県保護司会連合会では、地区保護司会と連携して、県下の小学校、中学校及び高等学校を中心に薬物乱用防止講座を実施しています。令和5年度は、佐賀県内の小学校9校、中学校7校、高等学校1校、約1,300の児童、生徒の皆さんと一緒に「薬物乱用防止について正しい知識を持つこと」「勇気を持って断ること」の大切さについて考えました。
我が国における薬物使用の生涯経験率は2パーセント台前半程度で推移しています(表1参照)。薬物を規制する法整備、国民性の違いから単純に比較することはできませんが、欧米諸国と比較してもその低さが際立ちます(表2参照)。これは、平成10年に策定された薬物乱用防止五か年戦略により、「薬物乱用・依存の防止」に対する教育等諸施策が一定の功を奏してきたからであると考えられます。
しかし、その使用率の低さから、我が国では、薬物乱用の問題は一部の人々の問題であり、一般の人々には、「自分には関係ないこと」と捉えられがちです。そのため、「早期発見・早期治療の必要性」と「再発防止の重要性」の認識の面においては諸外国に大きく立ち遅れています。
当会では、薬物乱用のない社会を実現するためには、社会から薬物乱用・依存に対する偏見や差別をなくし、社会的排除から社会的包摂への転換、「生きづらさ」を持つ人々へ寄り添う支援を展開していくことが大切であると考えています。
表1:我が国における薬物使用の生涯経験率
(厚生労働省HPから)
表2:主な国の薬物別生涯経験率
(厚生労働省HPから)
当会の薬物乱用防止講座は、綿密な事前打ち合せの後に実施させていただいております。
受講対象者、時間等により内容をカスタマイズ、また、ウェブ対応も可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。
※薬物乱用防止講座のレジメおよびスライド(中学生対象:50分授業)の一例を掲載しています。